一章七話 お日様の下の喧騒

2023年6月15日

稲葉楼にて

その日、稲葉楼では昼間から騒ぎが起きていた。

入り口には数人の人。揉めているのは千知とりくで、執り成す様に京と七夏が間に入っていた。
その周りには囲む様に千知の取巻きがいて、少し離れた所には原昌もいた。

おやまぁ、何の騒ぎだい?!

訪れたきよが尋ねた。興奮して花魁言葉ではなくなったりくが応えた。

り「この女、千枝に蕎麦の入った饅頭寄越しやがったの💢‼︎」
千「何よ❗️わざとだって言いたい?知らなかったのよ‼︎食べられないって‼︎」
り「だいたい何で差し入れなんてしたんだよ⁉︎あんだけ意地の悪い事してた癖にさ❗️」
千「ひどい‼︎少しは仲良くしようと思ってした事なのに・・・‼︎」

止めないか❗️二人とも‼️

わんわん泣く千知を七夏はなだめつつ、りくに部屋に戻るよう顎で合図した。
りくは京に引っ張られる様に奥へと向かった。

千知さん、今日のところは帰って下さい。誤解の元になるだけからもう文乃(千枝)に差し入れはしないで下さいよ。
それから原昌さん、あなたもその帳面寄越しなさい。こんな裏話を記事になんてしたら二度と協力しませんからね。良いですね😠?

原昌は渋々手にしていた帳面を七夏に渡した。
そして七夏はそこにいた取巻きにも押し返す様に帰るよう促し、やっと昼の稲葉楼の前には本来の静けさが戻った。
「やれやれ」と言う顔をする七夏にきよが目で合図を送る。七夏はほんの少しだけ首を縦に振って歩き出した。

その頃、稲葉楼の裏ではカラスの玄を通して騒ぎを知り駆けつけた音樹子がりくを待っていた。

りく、事情は聞いたわ。とりあえず落ち着きなさい。

姐さん、私あの女が許せない😡‼︎

解るわ。
でもね、よくよく考えなさい。誰がそうさせてるのか、誰が何を望んでそんな事をしてるのか…。元凶を知る事も必要よ。

一番の元凶はあいつよ。あの男よ‼︎
あの男が千枝を傷つけたんだ❗️

そうね。
だから傷口は綺麗に消毒しないとね。菌が残ったらまた蔓延って命を奪うわ。

姐さん…🥺

今皆に調べさせてるわ。あなたは千枝についていてあげなさい。
あなたがしっかりしないと千枝の事守れないわよ?
今回の仕事、あなたは彼女を守る事が役目。いいわね?

…はい、姐さん。

見番にて

何か判ったか?

情報流してるのはあの原昌だよ。
この間揉めてた千枝の客から蕎麦食べて死にかけた話を聞いてるから、その話を千知に流したに違いないよ。
あいつ男色なのか千枝に対して当たりが凄いんだよね。もしかしたら千知より酷いかもしれない。

なるほど・・・自ら手を汚さずに始末しようとしたわけか🤔。

多分ね。
ところで千枝ちゃんは饅頭食べたのかい?大丈夫?

りくがはちから聞いてね。間に合ったから命に別状はないが、それでも僅かに口にしてしまって、具合は悪くなったようだ。銀が診てくれてる。

ほっ…😩 良かったよ。

お揃いですね。

誠さん‼︎

昼間は静かな町ですからね。騒動はすぐ耳に入りましたよ。
きっとここだと…。

誠さんも何か掴んだみたいだな。

ええ。
遊吉はここに来る前にいた所で女を捨ててます。しかもまだ16で子供まで作ってました。逃げる様に雲隠れしていなくなったと親が泣いて話してくれました。

クズだね…。その子供はどうなったの?

流産した様です。
良かったのか悪かったのか…。

そうか…子供は可哀想だけど、良かったかもしれないね。

あと相方の恭輔も親しくなったと言うお婆ちゃんの箪笥から、勝手に金盗って逃げてました。盗んだ金はもっぱら女遊びに注ぎ込んでた様です。更に増やそうと賭博にも注ぎ込んでました。

はぁ?二人揃ってクズの極みだわ。

親から「この悔しさを金で晴らせるなら幾らでも出す。知らないか?」と聞かれたので、教えてくれたお礼に「いますよ」と伝えておきましたよ☺️。

そうか😏。
良いんじゃないか。

ですよね?☺️

姐さんに伝えなくちゃ😉。

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