一章八話 無邪鬼と邪気

2023年6月15日

前回一章七話「お日様の下の喧騒」

たまやにて

茶の間で音樹子と環がお茶を飲んでいると、夢路が疲れ果てた顔をして入って来た。

ふぇ〜😫やっと落ち着いた💦
いやぁほんと参ったよ。

あぁ・・・やっと少しは落ち着いたのね。

どうしたの?

姐さん、助力に感謝だよ。
環、聞いてくれよ。
俺が宣伝してた話がさ。どう言う訳か俺が勝手に宣伝したみたいになってて、とんでもない騒ぎになっちまったんだよ。

どう言う事?
贔屓がやるのは勝手だけど、自分が公に認める事はしないって方針だったけど、やって欲しいってそぶりは全開だったじゃない。

そうなんだよ。だから俺も表立ってやるのは控えてたけどさ。予めどう言う方向でやるかとかちゃんと話してたんだよ?だけどその喧伝用のチラシの出来が良過ぎたのか贔屓の奴らが「これは遊吉のした事なのか」「誰がやってるのか」って問合せが殺到した様でさ。俺には何にも言って来ない癖にいきなり公然と「俺は何も聞いてない。無関係。むしろ迷惑。」って言ったもんだから俺悪者になった😑。

贔屓客から妬まれたのよ。

この処遇にあったま来たから文句言いに言ったんだけどさ。
自分の言った事はすっ惚けてるし、ちゃんと断り入れてた事は知らないって言うし、こっちが筋道建てて話してもすり替えて返事してくるから話にならなくてさ。あの広告の挿し絵描いて貰った清や環の事も話してた筈なのに、他に仲間は誰がいるんだとか言われて…。あぁこいつ人の話全然まともに聞いてねーやって。
もうここのとこずっとこの対応に追われて仕事にならんかった😩

あ・・・それでなのね。私に文が届いたのよ。ほら。

文?どれどれ?

鼓星姐さんへ

近頃私の名を騙って私欲を貪る者がいますが、ご迷惑をおかけしてないでしょうか?
もしその様な輩が近寄りましたなら、お相手なされませんようお願い致します。
私の不徳の致す所で大変申し訳なく思っています。
今後ともご贔屓のほど宜しくお願い致します。

遊吉

はぁ?😕

環は遊吉のお気に入りだし、絵師としては離したくない相手。
たまやの居候の夢路と近いから離さない次善策を取ったのね。

アホらしい😑

忌々しい…けど同じ土俵には立ちたく無いや。

3人が話していると玄関からバタバタと部屋に向かってくる音がした。
清が手に文を握り締めて障子を開けて3人の姿を確認すると同時に持っていた文を突き出した。

やっと来れたわ💦
忙しくて直ぐに来れなくてごめんよ😣
あたしの所に遊吉からこんな文届いたんだよ。

あ・・・。それもしかして遊吉から?

え?
じゃあ環の所にも?

来たわよ。はい、これ。
清ちゃんのも見せて。

和泉屋清さんへ

何時もお世話になっております。
ここの所私の事を謳う広告が勝手に流布されていて、私の元に多数の苦情が届いております。その広告に載った絵が和泉屋さんの物である事から、ご迷惑かけてないかと気に病んでいます。私は広告が勝手に出回ったのは作った主の責任であり、絵を描いた和泉屋さんには罪はなく、むしろ主に騙されての事だと思っています。
私の知らない所での話とは言えご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。
私としては和泉屋さんの絵を大変好いております。どうか今後も優しい絵を描き続けて頂き、またご支援賜れれば嬉しく思います。

足田遊吉

・・・。
何が起きてるの?

👆上記の通り…って訳さ。

はぁ⤴︎?😩

二人ともこの界隈では定評ある絵師だから媚びて離さない様にしてるのね。

あいつは確かにハッキリ頼むとは言ってないからね。やり方としては巧妙だよ。
でもこちらはちゃんと筋は通してるし証拠もある。
ただチラシを渡しちゃいけない相手にまで渡しちまう様な事態になったのは俺の失敗だよ。だから俺としては贔屓の奴らはどうでもいい。
そんな事より中心となってる者が人の心をこねくり回す様な事するのは許せん😤。

お、またまたお揃いで…☺️
もしかして夢さんのとばっちり事件ですか?

清が開けっ放しにしていた障子の入り口に立ち、ずっとそこにいたかの様に現れたのは誠であった。

当たり。
誠さんが来たって事は・・・

えぇ、夢さんから頼まれた李の件ですよ。

とばっちり事件って言い得て妙だねw。
で、李って誰?

千知一派ではない遊吉の贔屓の一人ね。

そう。前に織音座でりくが家中ってヤツに絡まれて困ってた事があるんだよ。それを見兼ねて俺が嗜めたんだ。そん時に横入りして来たのが李でさ。うるさいって李も嗜めたんだけど、その後何でか知らんけど李に懐かれたんだよ、俺。

家中ってもしかしてたまにその辺練り歩いてる奇妙な格好した男の事かい?
たまに遊吉の贔屓と居るのを見かけるんだけど、そいつとよく連んでる牡丹色の紅さしてる女が李?

あーそれそれ。
で、李が今訳判らない言い掛かり受けてるって俺に言って来たんだ。

夢路の回想

李「夢路さん、聞いて下さいよ。今私酷い目に遭ってるんです。
遊吉さん恭輔さんの贔屓の間で回ってる会報が急に私に届かなくなったんですけど、私だけじゃなくて他にも回って来なくなった人が何人もいるんです。皆理由が判らなかったんですけど、贔屓の誰かが裏で便宜謀っていろいろ斡旋してるのがいるみたいで、特にここ最近は絵を頼まれて描いたって言うのが多くて、頼まれた方も親分肌でやってると思ってたのがどうもそうじゃないらしくて、遊吉さんに取り入る道具扱いされてるのではって話をいっぱい聞いたんですよ。他にも金持ってる人を巻き込んでたりとか…。
あの2人は贔屓は同じに扱いたいから誰かだけを特別扱いしないって言ってたのに…。その証拠を探そうと本人達も含めてあちこちに聞き回って調べてみたら、思い出した様に届いた会報に『贔屓同士の揉め事に関与しない。自分達は関係ないから苦情はお断り。噂を振り撒いてる者には近づくな。』って書いてあって・・・。どう思います?」
夢「どうって言われてもな…。聞いただけじゃわかんないよ。」
李「広告が回ってたり、絵が勝手に使われたりして、本当に納得行かないです!!」
夢「広告は違うよ。俺が書いたからな。」
李「えっ!?そうなんですか!!」
夢「だが今はそれ以上言えないよ。」
李「…判りました。自分で調べます!!」

夢さんも今他人事どころじゃないから俺が変わって調べたんですけどね。
当の千知は表向き知らぬ存ぜぬって顔してますが、気に入らない者を何気なく排除しまくってます。自分が何か頼まれてやってるなら遊吉の言う「贔屓は同じに扱う」事に反してるんだから隠し通さないと遊吉をまずい立場にするって事は誰の目にも明白です。でも相手が千知ですからね。自分の立ち位置を他の贔屓達に見せつけたくて仕方ないのでしょう。ボロボロと漏らしてます。
だから李の言ってる事は間違ってないですね。
ただ李も凄い執着でちょっと心配になりますけどね😅

李は夢路と違って白黒はっきりさせないと気が済まない人の様ね。
行動するのは素晴らしい事だけど、自分を抑えられない衝動での行為なら自分が参ってしまうわ。そこは大丈夫なのかしら?病まないと良いけど…。

李は鉄鍋に入った豆腐だからなぁ…。
俺は白黒より人を巻き込む方が嫌なんだよ。
さっさと切らないとアイツ益々騒ぐからさ。
…って、どーせ俺はコンニャクだよ🍢( *`ω´)

夢さん、それ総司のネタですか?w。
遊吉のやつ絵師探しは今やたら焦って探してるみたいですよ。
環さんや清さんに送った文の返事が来ないから焦ってるとか?

返事なら即返したよ。
「あんた誰に文送ってるの?」ってね。あたしはあたしの意思でやってること。大きなお世話だし人の悪口なんて聞かすんじゃないよって内容を丁寧な言葉で返してやったwww

私も返事は早々に送ったわ。
「それはそれはご心中お察し申し上げます。
今の所私の方は何の問題もございませんのでご心配に及びません。
今後のご検討をお祈り致します」ってね。

二人ともお見事💕

じゃその返事を見て焦ってるのか…。
千知が裏で何やらやってるのもそれか。

任せな‼︎それ私が調べてくるよ。
夢路、玄を見える所に置いといておくれ。なるべく早く報告するから。

わかった。頼む。

カフェにて

その店には「珈琲茶館」と言う名前があるのだが、町に一つしかない事から「カフェ」としか呼ばれない店だった。音樹子から珈琲について学んだ嘉月と言う男がマスターと呼ばれ、そのウェイトレスと呼ばれる女給・はなと蓉子がいた。はなは前述した総司のお気に入りである。

清「はなちゃん、元気してた?」
は「清さん、珍しいね。どうしたんです?」
清「たまには珈琲飲みたいと思ってね。はい、これお土産」
は「えっ!もしかして・・・」
清「あんたの好きな桜餅だよ。桜の塩漬けがいい感じになってたんでね」
は「有難う‼︎」
清「マスター。体調どう?」
嘉「まぁまぁさ。悪くないよ。珈琲でいいかい?」
清「頼むわ。あ、たっぷりのみるく入りでね。」
嘉「あ、了解👍。」

その時、入口の戸が開き、戸口に付けた大きな鈴がカランと音を立てた。
嘉月が戸口へ「いらっしゃいませ」と声をかけると、通りすがりの眼差しが清をチラッと見た。
清はそれに気付きさりげなく戸口に目をやった。するとそこには何処となく不自然な身なりの女が2人入って来ていた。女達は手慣れた様に店の最も目立たない柱の影の席に座り、何やらコソコソと話をしていて怪しさ満載だった。
嘉月は自ら珈琲を清の下に持ってきて呟いた。

嘉「渦中の人ですよ」
清「千知とその次鋒の十糸子だね。下手な変装だわ。時々来てるのかい?」
嘉「最近増えてますね。話の内容は聞こえないので解りませんが、金のやり取りはしています。」
清「有難う。マスター今日の珈琲何時もと違うね。」
嘉「わかりましたか?焙煎方法を少し変えてみました。」
清「うん、何時もの方が美味しいよ。」
嘉「はは😅それ言うならみるくたっぷり入れてないやつ飲んで言って下さい。」

苦笑する嘉月を尻目に清はバレないよう視線を二人に送っていた。

夜も探るか・・・

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