夜へ

2023年6月15日

前回一章三話「人形芝居」

見番にて

ここは花街に欠かせない総合事務所的な場所・見番。
見番は七夏がよくいる場所でもあるが、斎蔵が待機に利用している場所でもある。その中の比較的利用頻度の低い場所でよく打ち合わせていた。

その後どんな感じだい?

環の差し入れがいたく気に入ったらしいよ。環はここらじゃ有名人だから、その環の差し入れとなればハクがつくってもんだ。
調子に乗らせる為に夢路が広めたテイで清さんがサクラを用意して織音座に送ってる状況。

なるほど。
遊吉ばかりに気が行ってるが、相方の恭輔の方も調べてみたよ。芸風ほど悪い男じゃないみたいだけど褒められたもんでもないね。遊吉とは打算で繋がってるだけの様だよ。
面白そうだから張り付いてみると夢路が言ってたわ。

え💦夢路が?
物好きって言うか、何と言うか…🙄💧。

遊吉は女にだらしないが、恭輔は金にだらしない。叩いたら何か出てくるかもしれないよ。
りくの報告はこうだしな。

千枝は「遊吉さんはどなたからも施しは受けないけどあちきは別」って、ちょくちょく包んでるんよ。まことに他からは受け取ってないんか確かめよう思って、見番で見かけた時にコソッと包んで渡してみんした。 
そしたらあいつ、最初は断ってきたけど二、三回推したら「今回は初音さんの顔を立てて有難く」ってあっさり受け取ったんよぇ。だから間違いなく他からも貰ってでありんす。
恭輔も後からコソッとお礼を言われんした。恭輔は恭輔で賭博やら酒代やらで火の車らしいでありんす。花街では恭輔の方が派手に遊んでいんすからぇ。
わっちのあげた金子はさっさと山分けされたらしくて、ホクホク顔で安い揚屋で飲んでいんした。尤も山分けと言っても半分ずつ分けた訳でもなさそうでありんすがね。

まぁ遊吉は他からも金を受け取ってるだろうよ。
そこまで興行料増えてるとも思えないし、金がないとは言ってる割りには何気なく羽振りの良い事してる。今日たまやに来るのも一見じゃない川口先生だからこそではあるが払いは遊吉持ちだ。川口先生は顔が広いお人だから、大金払ってもお近付きになりたいだろうさ。
金魚のフンみたいに遊吉にくっついてぬくぬくしてる恭輔も同罪だね。

まぁそうだけど、夢路に目をつけられたら男終わるからな😅
そこまでする必要あるヤツでもない様な気がするが…。

調べれば判る事だ。調整するだろうよ。
それに男終わるだけなら人間終わるよりはマシだろうw

どっちがマシやら😅
まぁ誰に目をつけられても終わるのは一緒だけどな😏

りくが憂いてたがお京の話でも千枝は最近やけに自虐的になってるらしい。
周りが言えば言うほど意固地になって、その分自分を責めて、このままじゃ病んで仕事にならなくなると心配していたわ。
嫌がらせもだんだん陰湿になっているようだし。

先日稲葉楼の客が息巻いて「あの女が俺の服にこんなもの入れやがった」って言って来たよ。
紙の形代だった。名前は滲んでてよく読めなかったわ。形代は普通自分の身代わりになって悪いものを祓うものだけど、呪いに使う事もあるからな。客は名前の書いた形代を持たされて「そんなに俺を呪いたいのか!!」って激昂してね。おまけに千枝の懐紙に真っ新な形代が挟まってたもんだから、客はその形代に千枝の名前を書き殴って「棄てたらお前の所業を流布するからな」って押し付けてたよ。千枝は捨てるに棄てられなくなって今にも倒れそうだった。客は何とか宥めて帰したけどな。
誰かが仕組んだんだろうけど証拠がない。
あのままだと本当に危ないわ。

形代か・・・。何だかあの人形も形代の様な気がするな。
今日は差し入れ効果で環が呼ばれてる。
銀も送られてるから人形の確認も出来るだろう。

あいつらのやってる事は一見普通に起こりそうな事だが、俺にはあの人形の影響が否めないんだ。
おまけにあの人形に宿っている何かが日に日に黒く濃く大きくなっている。
早く然るべき対処しないと大変な事になるぞ。

今晩他も探っておく事にしよう。

そうだな。

そして物語は夜へと続く・・・。

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