一章夜一話の六 鴨葱
たまやお座敷にて
ようこそ。鼓星です。川口先生、お久しぶりです。
お初です。夕星(ゆうづつ)と申します。
お座敷に環と銀が入った。
夕星こと「桂銀」は、本来この界隈を専ら夜のみ現れる正体不明の女医である。
薬剤の知識に強く、積極的に西洋の医学も学んでいる。
昼に登場する事は滅多にないが、たまにオリオンズの手伝いをしている。
銀の正体は謎が多い。
川「おぉこれまた綺麗な妓だね。」
環「この妓はまだやっと芸妓になったばかりで不慣れなので、多少の事は大目に見て下さいましね。」
銀「どうぞお手柔らかに…。」
川「大丈夫大丈夫。僕もそんなに遊び人ではないのでね。」
環「あら、貴方は織音座にいた人形使いの方ですね。」
遊「覚えてくれてましたか。嬉しいなぁ。」
環「えぇ覚えてますとも。」
山「今日はね、足田くんのたっての願いでここに来たんだ。君の事を気に入ってるらしいよ。」
環「まぁ嬉しい。本当に来て下さったのね。」
遊「でもまだ自分の力ではなかなか来れそうにないですけどね。」
環「今日もお人形お持ちですの?」
遊「えぇ持ってますよ。」
銀「あら、これが噂のお人形?」
遊「そうです。」
遊吉は人形を取り出して銀に差し出した。しかし銀は二人に気づかれない程度に眉をしかめ、受け取る事はしないでお猪口を取って遊吉に差し出した。勿論その様子は環も見逃す事はなかった。遊吉はお猪口を受け取り酒を注がれるとご満悦そうで、特にその様子を気に留めるでもなく酒を飲み干した。
銀「遊吉さんはお人形が喋ってるのは何だとお思いなんですか?」
遊「何だろうね。悪いけど僕は化け物とか幽霊とかは信じてないんです。でもこの人形が喋る理由はわからないんですよね。」
環「何も仕掛けとかはなくても喋っているのに信じてはいらっしゃらないんですの?」
遊「まぁこれだけ話が出来ると全く信じないって訳にもいかないですけどね。」
川「これは正しく幽霊の仕業だよ。少しは信じたまたえ、足田くん。ははは。」
銀「あ・・・そう言えば舞台でご一緒されてる方は今日はいらっしゃらないんですか?」
遊「ああ、あいつは良いんです。こんな場所に来れる様なヤツじゃないので…。」
環「お人形は最近流行りの文化人形ですのね。何処で手に入れられましたの?」
遊「あ、この人形は『幸』って名前なんです。もともとは相方が住んだ家の押し入れに残ってた物なんで、わざわざ買った訳じゃないんです。大の男がこんな人形買ったら恥ずかしいじゃないですか😅」
環「(やっぱり恥ずかしいのか…🙄)」
遊「それで相方が『夢で人形が喋っていて怖い』って言うのを聞いて閃いたんです。それが今の人形が喋る芸って訳です。でも本当に喋り出したからびっくりしましたけどね。」
環「それまでは夢以外何もなかったって事?」
遊「相方の家での事は知るわけないし、言われてみれば何か音は立ててた様な気がするけど、それがそうとも言えないからね。」
川「いや、その夢からして始まってたに違いないよ。」
遊「そうですかね🤔。でもお陰で川口先生ともお話出来ましたし、仕事も増えました。人形様様です。」
川「それはそれは良かった。ただ気をつけたまえ。人形は恐らく依代だろうから霊がいる事は間違いないよ。その霊から恩恵を受けるばかりでは良くない。いずれはちゃんと帰るべき場所へ返してあげないとね。でないと人形の魂は行き場を失くして悪霊になってしまうかもしれない。その時に君がいれば君にも災いが降りかかってくるだろうからね。」
銀「川口先生、仰る通りだと思います。人であろが霊であろうが受けた恩は報いなければ何かしかの形で自分に戻って来てしまうものだと・・・あ、ごめんなさい。余計な事を申しました。」
川「いやいや貴女の言う通りです。幽霊に限らず貸し借りはご破算にする方が賢いと言うものですよ。」
多忙な川口であったため一時ほどの短い席で幽霊談義は終わり、席を立った二人を見送る為に環と銀も共に表に出た。するとそこにはベロベロに酔っ払った恭輔が女に抱きつく様にもたれかかってる姿があった。
遊「恭輔!!お前何こんな所にいるんだよっ😫」
恭「おー遊吉、今日は金がないから雰囲気だけでも楽しみたくて歩いてたら、声かけられたんだわ」
環「あら。龍湖」
恭輔と一緒にいる女は花魁顔負けの妖艶さであるが、実は夢路である。どちらが本当の姿なのかと聞かれるとどちらも自分だと本人は答える。
夢路がこの姿をしている時他の面々は人前で名前は呼ぶ事は避けていて、必要な時は「龍湖」と呼んでいた。
夢路がこの姿をしている時他の面々は人前で名前は呼ぶ事は避けていて、必要な時は「龍湖」と呼んでいた。
鼓星姐さん、今宵も三星様(さんじょうさま)が輝いているわ✨
ご機嫌ね☺️。
龍湖、今日は随分と仕事が早かったのね。
そー。だから遊びに来たのよ💕
恭「あ⭐︎鼓星姐さんやん!!綺麗ですねぇ。遊吉、すげーなぁ。こんな所に来れるなんて…。」
遊「お前こそ何やってるんだよ。」
夢「あーこの人ね。恭輔の相方さん。うーん、ごめんなさい。この顔苦手ヽ(´▽`)/」
銀「(⌒-⌒; )」
環「龍湖、失礼よ。ごめんなさいね。昔の男に似ていただけだと思うから、気になさらないでね。」
遊「あ、い、いや大丈夫ですよ。そんな気にするなんて…。」
夢「苦手とは言ったけど嫌いって言った訳じゃないしー。何なら私が褥のお相手致しましょうか?下手な遊女よりよっぽど手練れよ💕」
遊「あ💦い、いや💦俺は結構。」
恭「それなら俺の相手してくれ\(//∇//)\。」
夢「いいけど変な病い持ってないってわかったらにしてね☺️」
恭「お前本当失礼だなー(*’ω’*)」
夢「じゃ皆様ご機嫌よう💕私はもう少し飲んでくるわー」
銀「いってらっしゃい」
環「川口先生、しょうもないものお見せしてしまいましたね(^^;)」
川「なかなか楽しそうで良いじゃないか。あの子言う程飲んでもいなさそうだし」
環「さすがですね。よくお気付きで…☺️」
遊「シラフって事?😓」
銀「シラフではないと思いますよ。ただそんなに飲めないだけで…☺️」
環「まぁまぁ酔っ払いの言う事などお気になさらずに。それより是非またお越し下さいね。お待ちしてますから。」
遊「早くそうなりたいものです。」
環「約束して下さいましね☺️」
二人は川口と遊吉を見送った。
姿が見えなくなると音樹子が奥からこっそり二人を呼んだ。
どうだった?
あの人形にはタチの悪い女の悪霊がついてます。恐らく前は女の子の霊がいたんじゃないかと思いますが、その女の子が悪霊に変化したのか、入れ替わったのかどうかは判りません。あと遊吉にも生きた人の霊の様なものが憑いています。
夢路が恭輔に既に探り入れ始めたのね…。どうやら恭輔も女好きそうだけど、同じ女好きでも遊吉とは真逆なだらしなさがありそうだから、適任かもしれないね。
可哀想に・・・w。お薬用意しなくちゃ💕
「今宵も三星様(標的)が輝いている(照準)」ね。
ある意味妖怪より怖いわ。
本当ね。でも私達も妖怪みたいなものだわ。
まぁね。
あら貴女達、私の前でそれを言うの?w
あ・・・💦
あ😅
そ、そう言えば音樹子さんのお探しの人がどうやら見つかりそうですよ。
え!?本当!?
今斎蔵さんと誠さんとで確認中です。
・・・
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