鴉と蘇生りの水 四話 鴉の謎

2023年8月18日

昼・三話 詮議

嘉太郎の読み

詮議を終えて解散した後、僕は雅に会う為に夢路と森に向かった。

前回は雅に導かれた玄が案内してくれたし、月も結構明るかったので余り気にならなかったけど、今回は時々しか雲が晴れずになかなかの暗闇だった。
僕は暗い中で飛び回る事に慣れていたから大丈夫だけど、目の悪い夢路がそんなに躓く事もなく歩いてるのがちょっと不思議だった。夢路曰く「夜目は利く方だけど八割がた勘」だそうだw。日頃から物が見えない時は勘を働かせていて、そう言う時に霊が視えるらしい。勘を使わないと霊らしきものは先ず視えないとも言っていた。
なるほど確かに僕は「霊が視える」と言っても目では見ていない。見ているかの様に頭の中に浮かぶんだ。
ただ、人だと思ったら霊だったって言う事もよくあるから、どう見てるかの区別はしてないのかもしれない。僕にとっては人ならざるものは人と同じくらい常にいるから…。

さて、そんな事を考えてるうちに僕達は巣にたどり着いた。

 
 

あぁあそこだ。

 
 

夜は用心深くなってるはずだから玄に行かせようか…。
玄、俺達が来たって伝えて来てくれ。

夢路の肩にいた玄は一声「カァ」と鳴いた。
その声に返事をするかの様に巣から小さく「カァ」と聞こえ、玄は夢路の肩から飛び立って巣の近くの枝に止まった。

 
 

雅、君に起きた事を僕達に教えてくれ。

やや暫く沈黙が続いた。玄は枝に止まったままだった。
そして・・・。

 
 

あ・・・嘉太郎、…何か聞こえる…。
俺にはよく判らないけど・・・。

 
 

うん、何となくだけど…。伝わってくる。
どうやら雅が泉に水飲みに来ていた時に塞がれたみたいだ。
その時に逃げ出そうとして怪我したんだね・・・。

 
 

ごめんよ。気づかなくて……🥺。

 
 

うん…ごめん🥺。
でも雅は社長を恨んでる風ではないね。ただあの泉を元に戻して欲しいだけみたいだ。

 
 

何でそんなに優しいんだろう…。

 
 

うん…人に優しくされた記憶がある…のかな…。

 
 

人に?

 
 

そう…男の子…かな。それもそんなに前ではなさそう。

 
 

そうか…。
玄が俺達の気持ちを伝えてくれてる。
今晩玄はそばにいたいみたいだから俺達はもう帰ろうか…。

 
 

玄も優しいね☺️

 
 

雅、美鴉だから惚れたかな😁

 
 

カラスってツガイで子育てするんじゃなかったっけ?

 
 

そうだよ。でも雅は一人で育ててるから相手は何かあったんだろうな。
雅が怪我した時と関係あるのかなぁ🤔。
普通子育て中のカラスは凄く気が立ってるのに、玄が居ても嫌がらないし、
今の時期にしては雛が小さ過ぎる。
大抵この頃なら遅くても見た目は一人前になってるはずなんだけどな。
やっぱり妖だから普通のカラスとは違うのかな…?

 
 

そうか…なんだろうね🤔
そのうち雅が何か教えてくれるかもしれないネ。

 
 

そうだといいよな。

 
 

じゃ帰るか。

僕はカラスの事は詳しくないけど、夢路の言う雛の大きさの事が気になった。
何でもカラスは五月から七月の頃に子育てをして、巣立ちの頃になっても暫くは一緒にいる事があるらしい。
今はもう八月になっているから、一緒にいてももう一人前の見た目になってるはず、なのに雅の雛はまだ産毛が残る本当に雛の姿…。
でも雅は霊でも生でもない妖。
もしかしたらもうかなり長い事子育てをしているのでは…そんな気がした。

昼・五話 噂の出来栄え