一章夜二話の八 邪魔
仕立て屋にて
嘉太郎、いるか?
あ、斎蔵さん、わざわざ足運んで貰って悪かったね。
いや、いいんだ。それより何があった?
うん、どうも気になるんだ。あのちぃちゃんって人形に憑いてる霊がネ。
斎蔵さんにはどう見えてる?
実は俺も気になってる。
最初の頃は無邪気に遊吉の周りを走り回ったり覗き込んだりして無邪鬼だったんだけど、今は幼さが薄れてきて邪鬼に変わりつつある様に思えてならない。
そうなんだよネ。多分最初はただ楽しかっただけに違いないんだ。
でもあの霊に邪気はなかったのに、遊吉を慕うばかりに期待に応えようとしてしまっている。
魂は本来、生を全うしたならあの世に行かなきゃいけない。成仏出来ないって事はその大半が訳ありなんだよ。成仏出来ない霊を本意であれ不本意であれ私欲に巻き込めば、その代償を覚悟しなくちゃならない。
そうだネ。
何もなければちぃちゃんはそのまま居られたかもしれない。
だけど人の欲に応えようとすれば霊はその欲に応じる為に自分の力を使う。
応じる事に執着して自分の力を超えても応じようとすれば、足りない力を得る為に相手やその周りにいる生きた人の力を喰らい出し、いずれは己の欲に勝てなくなって化け物になっちまう。勝手なもんで人は化け物になった霊なんて欲しないどころか忌まわしがる。これこそが憂うべき事なんだ。だからこそそうなる前に送り出さないといけない。
その通りだョ。
送り出す作業は姐さんと夢路に頼まないとな。僕らではどうにも出来ない。
面白いよな。
視える俺達は視えるだけで何も出来ない。視えない夢路は祓えるんだから。
姐さんが言ってたョ。視えるからこそ祓えない方が良いって。
視える者は視える事自体に力を費やされるから命削る事になるってネ。
夢路は化け物にかって…😅
まぁたまに化け物みたいな力発揮するけどな😓
いっとき我慢してれば元に戻るからネ😏
修行僧みたいな事してた時期があるらしいからそのせいかも。
姐さんの後ろ盾もあるし。
あいつほんといろんな事やってたんだな😅
日頃の振る舞いは誰よりも煩悩塗れだけどネ😁
特に夜な💦
だから僧にはなれなかったんだろうさ😅
ソウトモイウネ( ´∀`)
清の潜入
清はカフェから戻り早々に夜の準備を済ますと夜の鬼隠街へと出て行った。
嘉月は知千達の会話は聞こえず判らないと言っていたが、清は唇の動きで話している内容を読む事が出来た。
清は元々くノ一の末裔である。よって読唇術等朝飯前なのだ。もう時代が移り変わり忍びとしての役目はほぼなくなっていたが、新しい政府の裏で忍びは重宝されていた。清もその中で活動していたが大怪我をしてしまった為引退となった。それからは料亭の女将を生業にしていたが、経緯を知った音樹子から出来る範囲で良いからと言われ仲間に加わったのである。
颯爽と屋根から屋根へと伝い辿り着いた場所は千知の家。元々は十糸子の貸家であるが、千知はこの家を遊吉の仕事用に提供すると言う条件で無償で借りていた。中の様子を屋根裏から伺う清。話声が聞こえ、その声は千知と十糸子だった。
十「今日はこれだけ集まりました。」
千「そう…。何だか寂しいわネ。もっとどうにかならないかしら?」
十「すみません💦」
千「私に謝る必要はないの。あの方に申し訳ないだけだから…。あと例の件はどうなってるの?」
十「ちぃちゃん人形は今作ってる最中です。団扇や手拭いに入れる絵がなかな決まらなくて…」
千「鼓星はどうなの?和泉屋の女将とか…」
十「遊吉さんが直々に文を認められたそうですが、良い返事ではなかったそうです。」
千「ちっ・・・あの女らも夢路の仲間って事かしら?」
十「今の所は何とも…」
千「忌々しい…。」
十「治水は遊吉さんに直談判した後はだんまりを決め込んでいるようです。」
千「皆にやり取りした内容の文は回ってる?」
十「はい…。今回上手い具合に暴れてくれたのがいたので放置して様子を見ています。」
千「そう。李は?」
十「あれは…。」
千「あの女、ほんと不愉快だわ。どうにかしないと遊吉さんがお気の毒だわ。」
十「は・・・はい。でもどうやって…」
千「あんな女、ちょっと重圧かけてやればすぐ潰れるわ」
十「なるほど・・・」
千「遊吉さんを守るのは私の役目。手加減しなくていいわ。」
十「はい、わかりました」
千「そろそろ遊吉さんのお帰りネ。何か用意しておかなくちゃ💕」
十「あ・・・千知さん」
千「何?」
十「先ほど遊吉さんから言伝てで、今日はお座敷に行くとの事です…。」
千「何ですって⁉︎まさか…」
十「・・・はい・・・」
千「この間初音さえ邪魔しなければ・・・」
十「あれ以来初音がずっと文乃に張り付いてて手が出せません。」
千「構わないわ。もう初音ごと片付けておしまい。」
十「え・・・」
千「良い事?絶対に私だと知られないようにね。そんな事になったらあなたも無事じゃないからね」
十「は、はい💦」
りく・・・・!!
夢路の潜入
一方、恭輔と出会い茶屋にいるのは龍湖こと夢路と恭輔。
夢「ハックション!!…誰か俺の噂してるな…」
恭「何か言ったか?」
夢「言ってないわよ。」
恭「それより龍湖さー。お前まだやらせてくれないつもりかー?」
夢「何言ってるのよ。あんた言うほど女と遊んでないでしょう?私が気づかないとでも思ってるの?
甘いわネ。干し柿より甘いわ。」
恭「え(;゜0゜)…なんで気付いたん…(;O_O)。」
夢「私の人生経験舐めてもらったら困るわ。つまらない男とは寝ないわよ。」
恭「つまらないって…😓 だったら何で俺なんかといるんだよ( *`ω´)」
夢「芸人って言うからどんなかなと思って…( ̄ー ̄)」
夢路はそう言いながら恭輔の鎖骨の真ん中辺りを指差し、指の腹を上に向けてすうっと首筋から顎先までを撫でて弾いた。
そしてそのまま両手で恭輔の頬を包み、口唇が触れそうで触れない距離まで顔を寄せて言った。
そんなに私を抱きたい?その時は極楽に連れて行ってあげるわ。
でも後は知らないわよ。
恭輔は妖艶に香る花の香りに頭をクラクラさせながら、意味深に笑みを浮かべる夢路の言葉を聞いていた。
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