鴉と蘇生りの水 六話 守護と扶翼

昼・五話 噂の出来栄え

夢路の扶翼

その日の夜、夜は森で巣を見守っているはずの玄が俺の下に戻って来た。
騒ぐ様子が尋常じゃなくて、何時もなら伝わって来るはずの玄の気持ちがまともに通じて来ない。ただ雅に何かあったらしいと言う事だけが判ったのみだった。
慌てて飛んで行くと巣のある木の下に雅が力無く羽を広げて伸していた。
大人のカラスが何もなしに落ちるなんて話は聞いた事がない。
そっと雅を拾い上げると口を開けて浅く早い息をしていた。このままじゃまずいと思った俺は、銀ちゃんの下へと走った。鳥、しかも妖を銀ちゃんが診れるかどうか判らなかったけれど、他が思い付かなかったんだ。
走りながらふと、姐さんならどうにかなるかもしれないと思いつき、玄に姐さんを呼んで来て貰う事と、巣を守る事を言いつけた。

 
 

鳥は診た事ないし、妖も診た事ないんだけど、あたしで大丈夫かしら😅

 
 

玄に姐さんも呼ぶ様に言ったからもうすぐ来ると思う。
ただの鳥なら人の薬でも効くと思うけど妖はどうなんだろ・・・😅

 
 

様子から判るのは疲れてるんだろうなって事位かしらね…😓

 
 

お待たせ。どんな様子?

 
 

姐さん、意識は朦朧としてるかな。
鳥としてみるなら体は熱くない。普通だと思う。

姐さんはそっと雅に手を当てて黙ったまま凝視していた。

 
 

・・・・・大丈夫そうよ☺️。
皆が雛達の面倒も見てるから安心して力が抜けただけみたい。
ずっと長い事一人で頑張ってたのね。

 
 

そか、安心したー😫

 
 

人に使う薬、効くの?

 
 

どうでしょうね…。
私は薬草なら効いてるわよ( ̄ー ̄)。

 
 

じゃ滋養に効く漢方を処方しておくわ。

俺は銀ちゃんに雅を預け、たまやに帰る道々どうしても気になっていた事を姐さんに聞いた。

 
 

姐さん、泉が元に戻ったとして、雅達にはどうすれば良いんだろう?
このままにしておくのが良いのかな。

 
 

そうね…。
雅の時を進めてあげないといけないわね…。

 
 

どうやって・・・。
成仏させるより難しいね。

 
 

新たな一歩を踏み出す事が出来れば、また時は前に進み出すと思うわ。

 
 

そうか…。

 
 

社長さんには少しでも早くあの泉を元に戻して貰いましょう( ̄ー ̄)。

 
 

ん?

 
 

お座敷に居るわよ、社長…☺️。

姐さんが意味ありげにニコリと笑った。
その意味を察した俺は姐さんを後にして大急ぎでたまやに戻った。

環の扶翼

今宵は姐さんが誠さんの企ての一旦を担う為に、倉庫会社の社長さんをお座敷にお招きしていました。
社長さんは姐さんが直々に訪ね、「泉の再興の噂を聞いて社長さんの漢気に絆されました。せめてもの感謝の気持ちを受け取って頂きたい。」と言うと、困惑しつつも満更でもない面持ちでお越し下さる事になったそうです。

お座敷は勿論私が務めさせて頂きました。
けれど普通にお相手するだけではつまらないのでもう一つ策を練る事にしました。
幾ら最高のおもてなしをすると言っても、この鼓星は他のご贔屓様にもしていない事は出来ませんからね…( ̄ー ̄)。

さて…そろそろかしら?

社「いやぁ鼓星の姐さんが来てくれるとは思いませんでした」
鼓「もうお噂は花街中に流れてますよ。あの泉を元に戻して下さるんですってね☺️」
社「やれやれもうそこまで噂が流れてるのか…😅」
鼓「ええ、とても有難いお話ですわ。あの泉は私のご贔屓にも利用する人がおりますのよ。
  再興するとなればきっと喜びますわ。
  ですから私からもお願いしたくて、このお座敷は私から『是非に』と申し出ましたのよ☺️」
社「いやはやまだ正式に決まった訳ではないんだがな・・・。」
鼓「まぁ決まってないんですの😲?私はてっきり…。」
社「ははは。尤もこんなにして貰ったら無下には出来んな😄」

社長さんは私の上げ奉った言葉に素直に喜んで頂いた様で、かなりの上機嫌でお酒も進んでいました。
ほろ酔い加減が丁度良くなって来た頃、もう一人の仕掛け人が登場です。
芸妓にしては大きな足音がして止まったと思ったら、「失礼します」と言う声と然程違わず襖が開きました。

 
 

あらあら…😅。龍湖、遅かったわね

 
 

あぁ失礼しました🙏💦
急いで来たものだから勢いが余ってしまったわ😅


社「龍湖?」
鼓「ええ、龍湖はこの界隈では神出鬼没の女給。西洋のキャバレットをうちの女将が直々に教えた子なんですよ。」
社「西洋の…。なるほど。どうりで洋装な訳だ😍。」
龍「龍湖です。お見知りおきを☺️」
鼓「普段お座敷に出る事はありませんが、今日は女将が特別に社長さんの為に呼びましたのよ。
  でもお気をつけあそばせ。日本の流儀とはかなり違いますからね☺️」
社「違うってどう・・・うわっ💦」

いきなり龍湖が社長の首に抱きつく様に纏わりついたので、社長は驚いて持っていた盃を落としてしまいました。

鼓「あらあら龍湖、社長さんのお着物が…」
龍「まぁ私とした事が…🥰、ごめんなさいね。」

龍湖の事ですからほぼほぼ狙っていたのでしょうけれど…😅。
龍湖はハンカチーフを取り出して社長の濡れた着物を拭き出したのは良いのですが、触れない方がいい所まで遠慮なく拭くものですから、社長は何もかもカチカチになってしまって…🤭。

社「こ、これが西洋の…?😳」
鼓「まぁ・・・これは龍湖の流儀かも・・・(⌒-⌒; )」
龍「社長、私の大切な大切な子もあの泉に助けられていますの。
  だからあの泉を元に戻して頂けるなら全魂込めてさーびすするわ💕」
社「さーびす?あーやーえー💦い、いや…その…(#°_°#)」
鼓「サービスって言うのは奉仕の事ですわ😅。
  社長、どうか本気にしないで下さいね😅奥様に叱られてしまいます。
  でも気持ちは本当ですからね。」
社「あ、あぁ…(#°_°#)」

私への返事なのか、出てしまっただけなのか、社長はよく解らない返事を返して来ましたが、龍湖のもてなしぶりは何時も以上に気合いが入っていて…とにかくこの夜は楽しんで頂けた様でした😅。

 
 

夢路、やり過ぎ😅

 
 

いいじゃない、これ位😊
最高のおもてなしよ💕

 
 

やれやれ…🤭

昼・七話 蘇生